東京府の消火用吸水孔
渋谷区神宮前6丁目のキャットストリートに東京府の消火用吸水孔の蓋が2個残っています。
この場所はかつて穏田川に架かっていた八千代橋で、消火活動に必要な水を川から汲み上げるために設置されたものです。蓋には縦線が太い東京府の府章と右書きで「消火用吸水孔」の文字が書かれています。
天龍寺や新宿御苑内の池を源流としていた穏田川は渋谷駅東口の宮益橋で宇田川と合流し、渋谷川となっていました。昭和4年(1929年)4月1日から昭和6年(1931年)11月6日にかけて渋谷川の改修工事が、昭和6年(1931年)から昭和9年(1934年)に宇田川の改修工事がそれぞれ行われました。これらの工事により、宇田川は現在の西武百貨店A館・B館間の井ノ頭通り(渋谷区道)の下に埋設、宮下公園(宮下橋)付近で穏田川と合流するように改められました。
その後、昭和9年(1934年)から昭和11年(1936年)にかけて穏田川の改修工事が行われました。穏田川の上流には原宿橋があり、「昭和九年五月竣功」と刻まれた親柱が今でも残っています。この吸水孔のある八千代橋は昭和10年(1935年)9月に竣工しました。
東京オリンピック開催に先立ち、昭和36年(1961年)から昭和38年(1963年)にかけて穏田川の暗渠化工事が行われ、東京都下水道局の千駄ヶ谷幹線になりました。そして上部は「旧渋谷川遊歩道」として整備され、現在では原宿橋以南がキャットストリートと呼ばれるようになりました。
現在、渋谷川は玉川通り(国道246号、東京都市計画道路幹線街路放射第22号線)の南側にある稲荷橋で開渠となり、港区内の天現寺橋で古川と名前を変え東京湾に注いでいます。
【参考文献】
東京府 『東京府史 行政篇 第四巻』 昭和11年9月19日
東京府總務部地方課 『東京府勢概要』 昭和12年5月25日
渋谷区教育委員会 『渋谷の橋』 平成8年9月30日
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