渋谷駅東口に現れた渋谷川
渋谷駅の東口バスターミナルの地下には渋谷川(二級河川・古川水系本流)が流れています。
昭和2年(1927年)に東京府によって宮益橋以南の澁谷川の改修工事計画が立てられ、昭和6年(1931年)11月に竣工しました。その直後に東京橫濱電鐵が澁谷川を跨ぐ形で東橫ビルを建設し、昭和9年(1934年)11月1日に東橫百貨店が開店しました。この当時、東橫百貨店から稻荷橋までは現在の東口歩道のあたりを開渠で流れていました。
その後、東京都市計画道路幹線街路放射第22号線(現在の六本木通り・東京都道412号霞ヶ関渋谷線と玉川通り・国道246号線)や首都高速3号渋谷線(東京都道首都高速3号線)等の建設、東急東横線渋谷駅の拡張・改良工事に伴い、昭和37年(1962年)に現在の位置に流路が変更された上、暗渠化されました。
平成21年(2009年)6月22日に渋谷駅街区基盤整備都市計画が決定・変更されました。これに伴い、同日付で渋谷川の宮益橋上流から稲荷橋上流までの約250mの区間が河川公用を廃止され、下水道扱いになりました。これにより、渋谷川は稲荷橋を上流端とし、天現寺橋までの約2270mの区間に短縮されました。
79年前の今日、昭和10年(1935年)3月8日、稻荷橋近くの澁谷區中通三丁目41番地の滝澤酒店北側路地でハチ公が息を引き取りました。その前年の昭和9年4月21日、澁谷駅前に忠犬ハチ公像(安藤照氏作)が設置されました。しかし昭和19年10月12日に金属供出され、昭和20年8月14日に鐵道省濱松工機部で溶解されました。現在のハチ公像は昭和23年8月にご子息の安藤士氏によって制作されたものです。
都市計画では、宮益橋~稲荷橋の流路が東口広場の中央寄りに変更され、同時に広場地下に雨水貯留施設が建設されることになっています。この流路移設の準備工事として、53年ぶりに暗渠部の天井の蓋が開けられました。現在は開渠になった部分に路面覆工板を敷き並べる工事が行われています。
また都市計画で埼京線ホームが移転してくることになっている東急東横線旧渋谷駅では、ホームや線路等の構造物の撤去・解体工事が進められています。現在では構造物は粗方撤去されていて、ホームの土台と軌道スラブの一部が残るのみとなっています。
ハチ公が眺めたであろう物がまた1つ消えていきます。
- 【参考文献】
- "澁谷驛連絡玉電ビル基礎工事", 土木建築工事畫法, 第14巻第6号, pp.278-281(昭和13年6月)
- 白根記念渋谷区郷土博物館・文学館 『「春の小川」が流れた街・渋谷 -川が映し出す地域史-』 2008年9月29日
- 渋谷区 『渋谷駅中心地区基盤整備都市計画変更のあらまし』 平成21年6月22日
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- 【改訂】
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