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九星の計算【2】

承前) 数千年というオーダーで考えますと、九星の計算の基準となる冬至と夏至の間隔が変化するという問題点があります。

地球が太陽の周囲を公転する周期にはいくつかの定義がありますが、代表的なものをJ2000.0(2000年1月1日正午)元期のユリウス世紀 T で表すと次のようになっています。ただし以下の議論では、T=0 としたJ2000.0での値を用います。

  • 太陽年 = 365.242190406.15×106T [日]
  • 恒星年 = 365.25636300+1.2×107T [日]
  • 近点年 = 365.25963584+3.12×106T [日]

恒星年は地球の真の公転周期です。太陽年は春分点を通過してから次の春分点を通過するまでの間隔で、1太陽年は1恒星年より約20分24.5秒短くなります。これは地球の歳差運動により春分点が地球の公転方向と逆向きに移動するためで、この歳差運動の周期は約25,770年になります。近点年は近日点を通過する周期で、1近点年は1恒星年より約4分42.7秒長くなります。これは地球の近日点が公転方向と同じ向きに移動するためで、約111,600年かけて公転軌道を1周します。

これらのことから、近日点が二至二分点に一致してから再び同じ二至二分点と一致するまでの間隔はグレゴリオ暦年で

365.2425÷(365.25963584365.24219040)=20936.273318462… [年]

になります。元期JD2457200.5(2015年6月27.0日)における地球の軌道要素での近日点黄経 ω は102.988°で、これを地心黄経に換算すると282.988°でした。このことから、冬至点と近日点が一致していたのは 755.333576014701… [年前]、即ち13世紀中頃となります。近日点は冬至点から春分点に向かって徐々に移動し、65世紀後半には近日点が春分点と一致するようになります。

ケプラーの第2法則 (Kepler's second law) は、惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(=面積速度)は一定であるという法則です。

太陽を原点としたときの惑星の位置ベクトルを r、惑星の速度を v とすると、面積速度 A は、

A = 12r × v

と表されます。この式と角運動量 L の式

L = r × p = r × mv

を比較すると、L=2mA の関係になることがわかります。ここで、p は運動量、 m は惑星の質量です。これを時間微分すると、

Lt = rt × mv + r × mvt
Lt = v × mv + r × mvt
Lt = r × mvt

になります。この式に運動方程式 F=mvt を適用すると次のようになります。

Lt = r × F

この式は角運動量の時間変化は外力のモーメントに等しいことを意味しており、外力 F を中心力とすると、rF であるので、

Lt = 0

となり、角運動量 L は一定となります。よって面積速度 A も一定になります。このケプラーの第2法則から、近日点付近では地球の公転速度が速くなることがわかります。

現在は近日点が冬至点を少し過ぎた辺りの点にありますので、冬至から夏至までが約182日弱、夏至から冬至までが約183日強となっています。しかし、近日点は徐々に春分点方向に移動していきますので、冬至から夏至までの間隔がますます短くなっていきます。そして、近日点と春分点が一致する65世紀後半には冬至から夏至までが約179日、夏至から冬至までが約186日になってしまいます。

これにより、二至直近の甲子日同士が240日間隔になるのが夏から冬の期間に集中するようになっていき、36世紀頃からはすべて夏から冬の期間だけになってしまいます。

…-冬-(180日)-夏-(240日)-冬-(180日)-夏-(180日)-冬-(180日)-夏-…

そして、40世紀頃から85世紀頃までの期間で甲子日の間隔が120日になることがあり、その前後の夏至直近の甲子日から冬至直近までの甲子日の間隔が240日になってしまいます。

…-冬-(180日)-夏-(240日)-冬-(120日)-夏-(240日)-冬-(180日)-夏-…

このため、前回の記事中のルールでは九星の日への配当が破綻してしまいます。 (続く...)

【参考文献】
岡田芳朗、阿久根末忠 『現代こよみ読み解き事典』 柏書房 1993年3月10日
岡田芳朗 『旧暦読本 現代に生きる「こよみ」の知恵』 創元社 2006年12月20日
国立天文台編 『理科年表 平成27年』 丸善 平成26年11月30日
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【改訂】
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