ワイドFM放送開始
12月7日(月)13時に、TBSラジオ(呼出符合JOKR、周波数954kHz)、文化放送(呼出符合JOQR、周波数1134kHz)、ニッポン放送(呼出符合JOLF、周波数1242kHz)の3局がワイドFM放送の本放送を開始しました。
1947年にアメリカのアトランティックシティで開催された無線通信主管庁会議 (ARC) で、超短波 (VHF) の76~108MHz帯が放送用周波数帯として割り当てられました。
昭和27年(1952年)12月5日に郵政省は「三大地区(京浜・名古屋・京阪神)テレビジョン放送用周波数割当計画」を発表しました。そこで、90~108MHz (1~3ch) と170~188MHz (4~6ch) の周波数帯がテレビ放送用として割り当てられました。
昭和32年(1957年)12月21日に郵政省はNHK超短波放送東京実験局に免許(呼出符号JOAK-FMX、周波数87.3Mc)を交付し、12月24日19時に周波数変調 (FM) 方式超短波ラジオ放送(以下FM放送)が開始されました。
昭和33年(1958年)3月1日に学校法人東海大学が東海大学超短波放送実験局の免許申請書を郵政省に提出し、4月25日に予備免許(呼出符号JS2AO、周波数86.5Mc、出力1kW)、12月26日に本免許が交付、31日に放送を開始しました。演奏所と送信所は渋谷区代々木富ヶ谷の東海大学代々木校舎内に設置されました。このときから使用された空中線鉄塔は今でも残っています。
昭和34年(1959年)11月に実験局の周波数が84.5MHzに変更されました。昭和35年(1960年)4月1日に東海大学超短波放送実用化試験局が免許(呼出符号JS2H、周波数84.5Mc、出力1kW)され、5月1日にFM東海の放送が開始されました。
昭和43年(1968年)11月29日に郵政省が「超短波放送用周波数割当計画」を公表し、76.1~89.9MHz帯をFM放送用として割り当てました。
昭和44年(1969年)3月1日からNHK東京がFM放送の本放送(呼出符号JOAK-FM、周波数82.5Mc)を開始しました。一方、新設されたFM東京(呼出符号JOAU-FM、周波数80.0Mc)に移行する形で、昭和45年(1970年)4月25日にFM東海は放送を終了しました。FM東京の送信所は開局時から東京タワーにあります。
中波放送帯 (526.5kHz~1606.5kHz) では朝鮮、中国、台湾、ソ連の放送局の大電力化が進み、夜間時間帯での混信により放送聴取が困難になる地域が出てきました。そこで当初は大電力化が進められました。しかし後年、中継局としてのFM放送の活用が考えられ、1990年7月に「放送用周波数使用計画」が改正されました。
第1 総則
6. 空中線電力が小さく、又はその周波数の使用状況からみてあらかじめ特定の周波数を定めておくことが適当でない次に掲げる中継局に係る周波数等は、当該放送がその行う放送に係る放送対象地域においてあまねく受信できるようにするため合理的と認められる範囲内に限り、電波の公平かつ能率的な利用を確保するため必要な事項を勘案して個別に定めるものとする。
(1) (略)
(2) 中波放送の外国波による混信対策のため補完的に超短波放送用周波数を用いて放送を行う中継局
2011年7月24日(岩手県、宮城県、福島県では2012年7月24日)をもって90MHz~108MHz帯のテレビジョン放送が終了したため、この周波数帯の活用が検討されました。そして、平成26年4月1日総務省告示第150号で「基幹放送用周波数使計画」が改正され、FM補完中継局が定義されました。
第1 総則
5 中波放送を行う基幹放送局の放送区域において災害対策等のため補完的に超短波放送用周波数を用いて放送を行う中継局(以下「補完中継局」という。)のうち第4の4に定める周波数を使用するもの以外のもの(以下「その他の補完中継局」という。)の周波数等は、個別に定めるものとする。この場合において、その他の補完中継局の開設目的に応じ、周波数については次に掲げるものの中から選定する。また、空中線電力については原則として100W以下とし、(1)から(3)までの開設目的を達成する必要最小のものとする。
(1) 中波放送の放送設備が災害発生時に被害を受け、放送の継続が困難となる事態への対策を開設目的とするその他の補完中継局
90.1MHzから94.9MHzまでの0.1MHz間隔の周波数
ただし、当該周波数を割り当てることができず、災害対策のために真に必要な場合に限り、76.1MHzから90.0MHzまでの0.1MHz間隔の周波数を使用させることができる。
(2) 建築物による遮へいによる電界強度の低下又は電気雑音の影響等の要因による受信障害対策を開設目的とするその他の補完中継局
90.1MHzから94.9MHzまでの0.1MHz間隔の周波数
(3) 外国波による混信対策又は地形的原因で生じる遮へいによる受信障害対策若しくは地理的原因による受信障害対策(地形的原因を除いた自然的条件の特殊性が原因となって発生する受信障害の対策をいう。)を開設目的とするその他の補完中継局
76.1MHzから94.9MHzまでの0.1MHz間隔の周波数
これに基づき、各放送局でFM補完中継局の設置が始まりました。TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送では前述の(1)と(2)を開設目的として、2015年10月5日から中波放送と同時送出(サイマル放送)で試験放送を開始しました。そして12月7日に総務省関東総合通信局から本免許が公布され、本放送になりました。
3局とも送信所は東京スカイツリーにあり、その周波数は、
- TBSラジオ:90.5MHz
- 文化放送:91.6MHz
- ニッポン放送:93.0MHz
となっています。この周波数帯の放送を受信するにはワイドFM対応のFMラジオが必要です。これ以外に、ワールドバンド対応等と謳った
- 【参考文献】
- 上島史郎: "FM放送のチャンネルプラン", テレビジョン学会誌, 第24巻第1号, pp.13-19(1970年1月)
- 山本透: "日本放送制度の変遷", コミュニケーション研究(上智大学), 第10号, pp.73-102(1978年3月)
- 【関連記事】
- 地上アナログテレビ放送終了 (2011.07.25)
| 固定リンク
「 放送・通信」カテゴリの記事
- 朝鮮語の数詞表現【実践篇】(2024.04.11)
- 朝鮮語の数詞表現【電波篇】(2024.04.10)
- 平壌放送小史【3】(2024.04.01)
- 平壌放送小史【2】(2024.03.27)
- 平壌放送小史【1】(2024.03.25)