市ヶ谷水管橋
靖国通り(東京都道302号新宿両国線・東京都市計画道路幹線街路放射第6号線)の市ヶ谷橋の東側には、JR中央線と外濠(新見附濠)を跨いでいる水道管専用の市ヶ谷水管橋が架かっています。
市ヶ谷水管橋は昭和6年(1931年)3月頃に完成した5径間の中路式プレートガーダー橋で、中央線を跨ぐ部分は水平、外濠を跨ぐ部分は新宿区側に向かって下がる斜路になっています。
橋には内径1100mmの配水管が1本通っていて、橋桁の側面上部にはコンクリート製の装飾された欄干があります。斜路部分の橋桁の銘板には、「昭和四年 株式會社橫河橋梁製作所 製作」と記されています。
土木建築工事畫法昭和6年4月號に掲載された記事"新東京名所 市ヶ谷見附跨線水道橋"に橋の仕様が書かれています。
東京市の水道が、中央線と外濠をオーヴァするところ、市ヶ谷見付に架設された總長322呎の水道橋、幅員15呎で、徑間は56呎3連、58呎3呎1連連の5徑間。下路鋼鈑桁橋で、橋臺は混凝土、橋脚鐵筋混凝土造。
この文章に記載されている寸法には誤植があります。同記事中の図面と照らし合わせますと、中央線を跨ぐ部分は96フィート (29.26m) 1連で、外濠を跨ぐ部分は56フィート (17.07m) 3連 + 58フィート (17.68m) 1連となっているようです。
橋の南側にはバタフライ弁がありますが、こちらは当時のものではなく1997年製のものです。
市ヶ谷駅から東京方に2つ目の水道橋駅付近の外濠(神田川)には、万治3年(1660年)頃から明治34年(1901年)まで神田上水の懸樋が架かっていました。市ヶ谷水管橋は現代版懸樋と言っていいのかもしれません。
- 【参考文献】
- "新東京名所 市ヶ谷見附跨線水道橋", 土木建築工事畫法, 第7巻第4号, pp.42-43(昭和6年4月)
- 法政大学エコ地域デザイン研究所 『外濠 江戸東京の水回廊』 鹿島出版会 2012年4月10日
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