環状道路第5号路線・明治通
「渋谷憲兵分隊の境界標と環状5号線」で環状道路第五號線「明治通󠄁」の整備について触れました。その後、この工事の詳細が判明しました。
環状道路第5号路線は、大正10年(1921年)5月13日に公告された東京都市計畫道󠄁路街路改修事業では11の路線に分かれていました。また、瀧野川町字飛鳥山前-王子停車場の区間は東京市區改正新設計貳等道󠄁路貳拾(Ⅱ.20、本郷區追分-王子停車場、府縣道六号東京川口線の一部)と重用することになりました。都市計画執行者は東京府知事及び東京市長でした。
等.類.號 | 始点 | 終点 | 距離[m] | 着工 | 竣工 |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ.Ⅲ.7 | 目黑村大字上目黑字柳町476 | 澁谷町大字中澁谷字大和田下243 | 1481.9 | S5.10.03 | S8.09.20 |
Ⅰ.Ⅲ.8 | 品川町大字北品川宿字御殿山327 | 目黑村大字下目黑字下道402 | 3555.3 | T14.12.01 | S6.04.30 |
Ⅰ.Ⅲ.9 | 目黑村大字下目黑字下道402 | 目黑村大字上目黑字氷川620 | 2895.3 | T14.02.13 | S3.10.15 |
Ⅰ.Ⅲ.10 | 澁谷町大字中澁谷字大和田下243 | 四谷區新宿3丁目12 | 3816.1 | T15.05.02 | S8.06.30 |
Ⅰ.Ⅲ.11 | 四谷區新宿3丁目12 | 高田町大字高田字後田565 | 2756.6 | S2.10.18 | S8.02.15 |
Ⅰ.Ⅲ.12 | 高田町大字高田字後田565 | 西巣鴨町大字池袋字蟹ヶ窪666 | 2325.2 | T15.12.21 | S8.04.20 |
Ⅰ.Ⅲ.13 | 西巣鴨町大字池袋字蟹ヶ窪666 | 瀧野川町字飛鳥山前65 | 2677.1 | T14.12.16 | S4.01.31 |
Ⅱ.20 | 瀧野川町字飛鳥山前65 | 王子停車場 | T6以前 | ||
Ⅰ.Ⅲ.14 | 王子町大字王子字山ノ下48 | 三河島町字大字三河島字木ノ本270 | 4324.5 | T15.04.22 | S7.10.10 |
Ⅰ.Ⅲ.15 | 三河島町大字三河島字木ノ本270 | 南千住町大字三之輪字箕里353 | 1506.9 | T13.01.09 | S7.11.05 |
下谷區三ノ輪町15 | 南千住町大字地方橋場字眞先1400 | 1670 | S5.03.31 | ||
Ⅰ.Ⅲ.16 | 南千住町大字地方橋場字眞先1400 | 吾嬬町大字小村井1049 | 2532.8 | S3.02.24 | S7.07.15 |
Ⅰ.Ⅲ.17 | 吾嬬町大字小村井1049 | 砂町大字平井新田字南元〆耕地628 | 4948.4 | T12.01.30 | 未完 |
砂町大字平井新田字南元〆耕地628 | 深川區西平井町15 | 未着工 |
大正12年(1923年)9月1日に関東大震災が発生し、大正13年(1924年)3月11日に帝都復興事業計畫が内閣広告されました。これにより、下谷区三ノ輪町-南千住町は復興計畫街路幹線第三十七號(三ノ輪-白鬚橋西詰)として国により整備されました。一方、砂町-西平井町も復興計畫幹線街路第三號(呉服橋-砂町、5255m、現: 永代通り)に組み込まれましたが、昭和8年の時点では着工されていませんでした。
工事は交通の状況を鑑みて緊急を要する箇所から順次着手されました。このため、路線単位の工期は長期間となっています。工事では雨水排水用の下水管や街路樹なども整備されました。『東京都市計畫環狀道󠄁路改修工事報告書』には、マンホール蓋と雨水枡蓋の図面が掲載されています。
道玄坂は一等大路第三類第七號路線の一部となっていましたが、繁華街だったことと帝都電鐵澁谷線道󠄁玄坂隧道(現: 京王井の頭線渋谷トンネル)工事との関係で着工・竣工ともに遅延したようです。
所謂道󠄁玄坂は幅一〇米乃至一六米の道󠄁路で、其の勾配は坂下より百軒店入口迄は約二二分の一、それより坂上迄は約一七分の一の急勾配にて、車馬の交通󠄁激甚にして交通󠄁事故の多い箇所であつた。山の手盛場の一で夕方から夜にかけて露店の出る時には更に一層の人出を加へ、道󠄁路有効幅員の狹めらるゝ結果、車馬の通󠄁行著しく困難を極め改修着手は最も急を要したのであるが、各種の事情に依り遷󠄁延し、昭和六年六月二十日失業の救濟工事として工事に着手したけれど、地上物件移轉の完了せさるものあり、工事は延期を重ねて昭和八年三月大部分完了したが、尚一部は帝都電鐵の地下橫斷箇所工事の未了部分あり、爲に漸く九月二十日全部の完成を告ぐるに至つたのである。
道玄坂沿いの澁谷町大字中澁谷字道玄坂272番地にあった陸軍東京憲兵隊澁谷分隊駐屯所は昭和2年(1927年)7月25日に目黑火藥製造所(現: 防衛省防衛研究所)に移転しました。
東京憲兵隊澁谷憲兵分隊假移轉
東京憲兵隊澁谷憲兵分隊ハ廳舎改築ノタメ去月二十五日東京府荏原郡目黑町三田十五番地目黑火藥製造所内ニ假移轉シ同日ヨリ事務ヲ開始セリ(陸軍省)
そして昭和2年11月28日に府縣道第一號路線(現: 玉川通り・国道246号)と東京府道第二十三號調布澁谷線(現: 淡島通り・東京都道423号渋谷経堂線)の分岐点の所(現: 住友不動産渋谷ガーデンタワー)に再移転しました。
澁谷憲兵分隊移轉
澁谷憲兵分隊ハ去月二十八日東京府豊多摩郡澁谷町中澁谷字豊澤ニ移轉シ同日ヨリ事務ヲ開始セリ(陸軍省)
明治通󠄁は四谷區新宿三丁目で甲州街道(八號國道、現: 国道20号)と交差しています。元々、京王線の新宿追分駅がこの交差点北側の道路上にありましたが、一等大路第三類第十號路線の街路整備工事により、昭和2年(1927年)10月28日に交差点角地に移転しました。そして、昭和5年(1930年)3月6日に四谷新宿と改称しました。
その後、昭和12年(1937年)5月1日に京王新宿と改称し、昭和20年(1945年)7月24日に現在の場所に移転しました。現在、駅跡地には京王新宿追分ビルと京王新宿三丁目ビルが建っています。
本記事の公開の伴い、以下の記事を修正しました。
- 【修正記事】
- 道玄坂の看板建築 (2015.02.05)
- 北品川に残る東京府の角蓋 (2014.02.27)
- 渋谷憲兵分隊の境界標と環状5号線 (2012.07.08)
- 東京府のマンホール【3】 (2011.06.06)
- 東京府のマンホール【1】 (2011.05.28)
- 【参考文献】
- "東京憲兵隊澁谷憲兵分隊假移轉", 官報, 第183號, p.194(昭和2年8月8日)
- "澁谷憲兵分隊移轉", 官報, 第280號, p.90(昭和2年12月3日)
- 斯波武編纂 『京王電車囘顧二十年』 昭和5年
- 復興事務局 『帝都復興事業誌 土木篇 上巻』 昭和6年3月31日
- 東京府土木部 『東京府道󠄁路槪要』 昭和7年7月
- 東京府土木部 『東京都市計畫環狀道󠄁路改修工事報告書』 昭和8年11月
- 益井茂夫: "京王電気軌道・京王帝都電鉄 新宿駅の移り変わり", 鉄道ピクトリアル, No.578, pp.140-144(1993年7月)
- 【関連記事】
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