萬代橋【1】
萬代橋は、信濃川(一級河川・信濃川水系本流)に架かる東大通/萬代橋通り(国道7号・新潟都市計画道路3·3·507号万代橋通線)の橋です。
前史
かつて、信濃川は河口付近で阿賀野川と合流していました。律令時代に越後国の国府津である蒲原津がこの合流地点に設けられました。鎌倉時代の頃に沼垂湊が東岸に、戦国時代に新潟湊が西岸にでき、これらは「三ヶ津」と称されていました。ところが新潟湊が現れてから蒲原津は衰退し、延宝年間(1673~1681年)の洪水で流され廃港になりました。また、沼垂湊は河川の氾濫により数度の移転を余儀なくされ、発展の機会を失ってしまいました。
新潟湊は明暦年間(1655~1658年)に下関を経て大阪に至る西廻り航路の寄港地に指定され、中心的な湊として栄えるようになりました。安政5年6月19日(1858年7月29日)に締結された「日米修好通商条約」で新潟湊は箱館(函館)、長崎、神奈川(横浜)、兵庫(神戸)と並び開港五港の1つに挙げられました。そして、明治元年11月19日(1869年1月1日)に外国船に開港されました。
なお、享保15年(1730年)に新発田藩によって阿賀野川の捷水路が開削され、直接日本海に注ぐようになりました。そして旧流路は通船川(一級河川・信濃川水系信濃川支流)になりました。
初代萬代橋
新潟と沼垂は信濃川の渡船によって連絡されていました。しかし、当時の信濃川は川幅が約770mと広く、季節や天候によっては欠航や転覆事故も多発しました。
そこで、新潟日日新聞社長の内山信太郎氏(弘化3年~大正4年8月)は架橋に奔走し、第四国立銀行(現:第四銀行)頭取の八木朋直氏(天保12年~昭和4年6月)の出資を得て、明治19年(1886年)2月に着工しました。そして、11月4日に橋長430間(約782m)、幅員4間(約7.3m)の木造橋が完成しました。
橋梁は、萬代までも新潟の街の発展に尽くすことを願って「萬代橋」(よろづよばし) と命名されました。しかし数年後に音読の「ばんだいばし」に転訛してしまいました。同様な転訛は秋葉原の万世橋 (よろづよばし→まんせいばし) でも見られました。
橋梁の東詰は現在の流作場五差路付近にありました。流作場五差路は東大通/萬代橋通り、万代町通り(新潟市道万代沼垂線、新潟都市計画道路3·4·522号万代沼垂線)、旧新潟駅前通(新潟市道南2-47号線)、小須戸線(新潟県道1号新潟小須戸三条線)が接続する交差点で、初代萬代橋の親柱と欄干のレプリカが設置されています。
渡河位置は現在より約30m上流側でした。その跡地の信濃川東岸の堤防上には、「萬代橋架設百周年記念碑 (初代萬代橋 橋跡の碑)」が昭和61年(1986年)12月14日に設置されました。
萬代橋は内山信太郎氏と八木朋直氏の共同所有で、1人1銭の通行料を徴収していたため、利用者から不評でした。その上、木橋であるため多額の修繕費がかかり、有料橋としての経営は極めて厳しい状況でした。
明治30年(1897年)11月27日に北越鐵道の沼垂駅が開設され、翌年12月27日に直江津-沼垂間の全線が開通しました。このため萬代橋の重要性が高まり、個人所有ではなく行政が公的に管理すべきという世論が高まりました。そこで、明治33年(1900年)4月に新潟縣は萬代橋を15900余円で買収し、無料化されました。
第四国立銀行は明治29年(1896年)に国から民間に委譲され株式会社に改組されました。昭和2年(1927年)10月に竣工した住吉町支店の建物は、平成16年(2004年)に新潟市歴史博物館 (みなとぴあ) の敷地へ移築復元されました。そして平成17年(2005年)に国の登録有形文化財に登録されました。
2代目萬代橋
明治37年(1904年)5月3日に北越鉄道が萬代橋東詰に開設された新潟駅まで延伸され、交通量が増大しました。その上、老朽化の進行により橋梁の架け替えが明治40年(1907年)の県議会で決議され、県は改築計画を進めました。その矢先の明治41年(1908年)3月8日に発生した新潟大火で萬代橋は西詰から半分以上が焼失してしまいました。
県は翌日から渡船を運行するとともに仮橋を架橋して人車の通行を確保しました。そして、焼け残った基礎杭を利用して架橋を進め、明治42年(1909年)12月に2代目の木造橋梁が竣工しました。橋長は初代と同じ430間(約782m)でしたが、幅員は4間2尺(約7.9m)に拡げました。
大正3年(1914年)4月1日、新潟市と沼垂町は合併し、翌年から沼垂地区で市営の築港事業が始まりました。萬代橋の架橋は、新潟市が近代港湾都市として発展する1つの大きな契機となりました。
(続く)
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