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池上線開通90周年

蒲田-雪ヶ谷間で営業していた池上電氣鐵道が、その路線を五反田まで逐次延長し始めてから90年になります。

万燈 寺

大正11年(1922年)10月4日、池上電氣鐵道は池上本門寺(長栄山大国院本門寺)参詣客輸送の目的で池上-蒲田間の営業を開始しました。これは、毎年10月11日から13日にかけて行われる池上本門寺のお会式に間に合わせるためでした。

地方鐵道運輸開始

本月四日東京市麹町區有樂町一丁目三番地池上電氣鐵道株式會社ニ對シ池上蒲田間一哩一分旅客運輸營業開始ヲ認可シタルニ同六日營業開始ノ旨届出テタリ其哩程左ノ如シ(鐵道省)

池上いけがみ蓮沼はすま 〇・七
蓮沼蒲田かまた 〇・四

官報では蓮沼駅の読みが「はすま」となっていますが、「はすぬま」の誤植です。

翌大正12年(1923年)5月2日に池上-雪ヶ谷(現:雪が谷大塚)間が延伸開業しました。

地方鐵道運輸開始

本月二日池上電氣鐵道株式會社ニ對シ池上雪ヶ谷間二哩二分旅客運輸營業開始ヲ認可シタルニ同四日營業開始ノ旨届出テタリ其哩程左ノ如シ(鐵道省)

池上(旣設停車場)光明寺こうみやうじ 〇・七
光明寺末廣すゑひろ 〇・六
末廣御嶽山前おんたけさんまへ 〇・四
御嶽山前雪ヶ谷ゆきがや 〇・五
7103F

同年、目黑蒲田電鐵が池上電氣鐵道の計画線と完全に並行する目蒲線(目黑-蒲田間)を開業させたため、起点を目黑から五反田に変更し、延伸に着手しました。そして、昭和2年(1927年)8月28日に桐ヶ谷まで開業しました。なお、桐ヶ谷は昭和20年(1945年)5月25日の空襲で被災し7月25日に休止、昭和28年(1953年)8月11日に廃止されました。

地方鐵道運輸開始

東京橫濱電鐵株式會社所屬鐵道丸子多摩川、澁谷間五哩七分去月二十八日ヨリ運輸營業開始ノ旨届出アリタリ其哩程左ノ如シ

(略)

池上電氣鐵道株式會社所屬鐵道雪ヶ谷、桐ヶ谷間二哩九分同日ヨリ運輸營業開始ノ旨届出アリタリ其哩程左ノ如シ(以上鐵道省)

驛名 所在地 哩程
雪ヶ谷 (旣設驛)
石川いしかわ 東京府荏原郡池上町大字石川 雪ヶ谷、石川間 〇・四
洗足池せんぞくいけ 同府同郡同町大字池上 石川、洗足池間 〇・四
長原ながはら 同府同郡馬込村大字長原 洗足池、長原間 〇・四
旗ヶ岡はたがおか 同府同郡荏原町大字中延 長原、旗ヶ岡間 〇・五
荏原中延えばらなかのぶ 同府同郡同町大字同 旗ヶ岡、荏原中延間 〇・五
戸越銀座とごしぎんざ 同府同郡同町大字戸越 荏原中延、戸越銀座間 〇・四
桐ヶ谷きりがや 同府同郡大崎町大字桐ヶ谷 戸越銀座、桐ヶ谷間 〇・三
東急7902F

同年10月9日には、東京府道第百二十三號下大崎大井線(壹等大路第參類第貳拾號路線Ⅰ.Ⅲ.20、現:山手通り/東京都道317号環状六号線・東京都市計画道路幹線街路環状6号線)手前の大崎廣小路まで延伸しました。これにより目黑川対岸の五反田駅とは徒歩連絡が可能になりました。

地方鐵道運輸開始

池上電氣鐵道株式會社所屬鐵道桐ヶ谷、大崎廣小路間本月九日ヨリ運輸營業開始ノ旨届出アリタリ其哩程左ノ如シ(鐵道省)

驛名 所在地 哩程
桐ヶ谷 (旣設驛)
大崎廣小路おほさきひろこうぢ 東京府荏原郡大崎町大字谷山 桐ヶ谷、大崎廣小路 〇・四
Gotanda_1932

翌昭和3年(1928年)6月17日に東京府道第百二十三號と目黑川を跨いで五反田まで到達し、ここに現在の池上線の路線が全通しました。この五反田延伸が遅くなったのは、同時期に施工されていた東京府道第百二十三號線(Ⅰ.Ⅲ.20)の整備工事ならびに目黑川改修工事との兼ね合いがあったと考えられます。

地方鐵道運輸開始

池上電氣鐵道株式會社所屬鐵道大崎廣小路、五反田間本月十七日ヨリ旅客運輸營業開始ノ旨届出アリタリ其哩程左ノ如シ(鐵道省)

驛名 所在地 哩程
大崎廣小路 (旣設驛)
五反田 (國有鐵道旣設驛) 大崎廣小路、五反田間 〇・二

池上電氣鐵道は更なる路線拡大を目指して、同年10月5日に支線である奥澤線を開業しました。

地方鐵道運輸開始

池上電氣鐵道株式會社所屬鐵道雪ヶ谷、新奥澤間零哩九分本月五日ヨリ旅客運輸營業開始ノ旨届出アリタリ其哩程左ノ如シ(鐵道省)

驛名 所在地 哩程
雪ヶ谷 (旣設驛)
諏訪分すはぶん 東京府荏原郡玉川村大字等々力 雪ヶ谷、諏訪分間 〇・五
新奥澤しんおくさわ 同府同郡同村大字同 諏訪分、新奥澤間 〇・四

ところが、これが五島慶太氏が率いる目黑蒲田電鐵の地盤と権益を損なうものとなりました。そこで、五島氏は敵対的買収に乗り出し、池上電氣鐵道の大株主であった川崎財閥から直接株を取得しました。この結果、目黑蒲田電鐵は昭和8年(1933年)7月10日に池上電氣鐵道を傘下に収め、翌昭和9年(1934年)10月1日に吸収合併しました。そして、昭和10年(1935年)11月1日に奥澤線は廃止されました。

鐵道一部運輸營業廢止實施

本年九月十九日目黒蒲田電鐵株式會社ニ對シ雪ヶ谷、新奥澤間鐵道運輸營業廢止ノ件許可セル處本月一日之ヲ實施セル旨届出アリタリ(鐵道省)

東急1024F

池上電氣鐵道が導入した譲受車以外の車両は東洋電機製のデッカー式制御器を搭載していたため、他形式の車両とは互換性がありませんでした。このため早々と整理対象になり、昭和23年(1948年)から昭和24年(1949年)にかけて全車が地方鉄道に譲渡されました。そして他線で使用された中古車両ばかりが使用されていました。平成5年(1993年)3月15日に63年ぶりの新車となる1024Fが池上線で営業運転を開始しました。

ステッカー 東急1023F

2017年8月27日(日)から2018年8月31日(金)までの1年間、池上線90周年記念イベントが開催されています。これをPRするステッカーが1023Fの前面貫通扉に貼られています。ステッカーには、「いつもを乗せて90年 東急池上線」と書かれています。

大崎広小路まで延伸されてちょうど90年となる10月9日(月・祝)には、「開通90周年記念イベント 10月9日池上線フリー乗車デー」が実施され、池上線のみ運賃無料で乗車できる「東急池上線1日フリー乗車券」が池上線の各駅で配布されました。

なお、池上電気鉄道に関する歴史的論考はXWIN IIさんがサイト内の「池上電気鉄道の興亡」や「池上電鉄 VS 目蒲電鉄」などで詳細に行っています。

【参考文献】
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第3059號, p.237 (大正11年10月10日)
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第3229號, p.197 (大正12年5月8日)
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第217號, p.454 (昭和2年9月16日)
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第240號, p.355 (昭和2年10月14日)
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第450號, p.754 (昭和3年6月28日)
"地方鐵道運輸開始", 官報, 第540號, p.293 (昭和3年10月11日)
東京府土木部 『東京府道路槪要』 昭和7年7月
大崎町小學校長會 『大崎町鄕土敎育資料』 昭和7年9月30日
東京府土木部 『東京都市計畫環状道路改修工事報告書』 昭和8年11月
"鐵道一部運輸營業廢止實施", 官報, 第2674號, p.748 (昭和10年11月30日)
東京急行電鐵株式會社 『東京橫濱電鐵沿革史』 昭和18年3月25日
金子智治, 焼田健: "東京急行電鉄 現有車両プロフィール2004", 鉄道ピクトリアル, 749, pp.195-243 (2004年7月)
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【改訂】
『大崎町鄕土敎育資料』の「大崎橋と池上電鐵」の写真を追加 (2017.10.22)

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