飯田橋駅前の逓信省マンホール
昭和3年(1928年)11月15日に牛込駅と飯田町駅の近距離電車ホームを統合する形で飯田橋駅が開業しました。
明治27年(1894年)10月9日に甲武鉄道の新宿-牛込間が開業しました。牛込駅は牛込見附の新宿方にあり、駅舎は線路東側の高台上を通る現在の千代田区特別区道255号線に面していました。現在でも駅舎両脇の石垣が残っています。
運輸開業免許狀下付
本月六日甲武鐵道新宿牛込間運輸開業免許狀ヲ下付セシニ昨九日ヨリ開業ノ旨届出テタリ但シ哩數ハ左ノ如シ(遞信省)
新宿ヨリ信濃町マテ 一哩四十鎖
信濃町ヨリ四ツ谷マテ 六十鎖
四ツ谷ヨリ牛込マテ 一哩二十鎖
翌明治28年(1895年)4月3日に牛込-飯田町間が開業しました。
運輸開業免許狀下付
本月二日甲武鐵道牛込飯田町間運輸開業免許狀ヲ下付セシニ本月三日ヨリ開業スル旨届出テタリ哩數ハ左ノ如シ(以上遞信省)
牛込飯田町間 零哩四十鎖
明治37年(1904年)8月21日に飯田町-中野間が直流600Vで電化されました。このときに製造された"は9"は国有化後の明治43年(1910年)にデ963形968号になりました。大正4年(1915年)に電装解除の上、信濃鉄道に払い下げられました。さらに大正11年(1922年)に筑摩鉄道 (→松本電気鉄道、現:アルピコ交通) に譲渡され、廃車後も保管されていました。そして2007年からハニフ1として鉄道博物館で展示されています。
電車開始竝停車場設置
甲武鐵道株式會社線路飯田町中野間電車運轉竝ニ信濃町新宿間ニ千駄ケ谷停車場ヲ設置シ本月二十一日開始ノ旨届出テタリ其哩數左ノ如シ(遞信省)
信濃町千駄ケ谷間 〇・四哩
千駄ケ谷新宿間 一・一哩
明治39年(1906年)10月1日に鐵道國有法 (明治39年3月31日法律第17号)により国有化されました。
第一條 一般運送ノ用ニ供スル鐵道ハ總テ國ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鐵道ハ此ノ限リニ在ラス
第二條 政府ハ明治三十九年ヨリ明治四十八年迄ノ間ニ於テ本法ノ規定ニヨリ左ニ掲クル私設鐵道ノ株式會社所屬ノ鐵道ヲ買收スヘシ
[中略]
一 甲武鐵道株式會社
[中略]第三條 前條ニ掲ケタル各鐵道買收ノ期日ハ政府ニ於テコレヲ指定ス
[以下略]
遞信省告示第二百三十九號
鐵道國有法第三條ニ依リ北海道炭礦鐵道株式會社外五會社所屬鐵道買收期日ヲ左ノ通指定セリ
明治三十九年七月二十一日 遞信大臣 山縣伊三郎
北海道炭礦鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十月一日
甲武鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十月一日
日本鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十一月一日
岩越鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十一月一日
山陽鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十二月一日
西成鐵道株式會社所屬鐵道 明治三十九年十二月一日
中央線の急行線線増工事に伴い、昭和3年(1928年)に牛込見附と東京市區改正新設計參等道路七 (現: 目白通り) の間に飯田橋駅が開業しました。駅名は東口のすぐそばの外濠に架かる飯田橋から名付けられました。
鐵道省告示第二百五十二號
中央本線牛込停車場ハ十一月十四日限リ之ヲ廃止ス
昭和三年十一月六日 鐵道大臣 小川平吉
鐵道省告示第二百五十三號
昭和三年十一月十五日ヨリ中央本線飯田町市ケ谷間ニ左ノ停車場ヲ設置シ旅客、手荷物、小荷物及旅客附随小荷物ノ取扱ヲ開始ス
昭和三年十一月六日 鐵道大臣 小川平吉
驛名 所在地 哩程 飯田橋 東京都麹町區飯田町五丁目 飯田町飯田橋間 零哩三分
飯田橋市ケ谷間 零哩九分
目白通り (東京都道8号千代田練馬田無線) の飯田橋駅東口前の歩道上に、逓信省のコンクリート製マンホールが残っています。蓋は角型の2枚組みで、中央に逓信省徽章である〒マークがあります。
現在、曲線にかかっている飯田橋駅のホームを新宿方の直線区間に約200mほど移動する工事が行われています。新しいホームの新宿方は旧牛込駅の跡地を利用して設けられる形になります。
- 【参考文献】
- 菅原恒覽 『甲武鐵道市街線紀要』 甲武鐵道株式會社 明治29年10月11日
- "運輸開業免許狀下付", 官報, 第3387號, p.142 (明治27年10月10日)
- "運輸開業免許狀下付", 官報, 第3527號, p.70 (明治28年4月6日)
- "電車開始竝停車場設置", 官報, 第6350號, p.650 (明治37年8月29日)
- "遞信省告示第二百三十九號", 官報, 第6918號, p.549-550 (明治39年7月21日)
- "鐵道省告示第二百五十二號", 官報, 第560號, p.100 (昭和3年11月6日)
- "鐵道省告示第二百五十三號", 官報, 第560號, p.100 (昭和3年11月6日)
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