東京市の混凝土製弁蓋とSL標識
渋谷区代々木2丁目の青山街道(渋谷特別区道第868号路線)と小田急小田原線が交差する新宿2号踏切脇に建っている旧小田急本社ビル(現:小田急南新宿ビル)近くに東京市水道局のコンクリート(混凝土)製弁蓋が残っています。
弁蓋の中央にはフック穴と一体化した東京市水道局の金属製紋章がはめ込まれていて、コンクリート部分には何も刻まれていません。この紋章は『日本水道史』の東京市上水道の項に掲載されている紋章と同型です。
この紋章と同じものは、文京区本郷にある東京都水道歴史館に展示されている「自記録水圧計スタンド」の上部にある蓋にも描かれています。これを見ると東京市章を模ったものであることがわかります。この水圧計の脚部の前に置かれている説明板には次のように書かれています。
自記録水圧計スタンド
網の目のように張りめぐらされた水道管のところどころに、その中を通過する水量を計るため、水圧計が設置された。
この蓋の近くに小田原線新宿2号踏切の存在を示す「踏切あり」の標識が建っています。この標識は昭和25年 (1950年) 3月31日の総理府・建設省令第1号により定められたSL様式の標識 (207-A) です。
昭和61年 (1986年) 10月25日の総理府・建設省令第1号で電車様式の標識 (207-B) が追加され、今ではこちらの方が主流になっています。新宿2号踏切の新宿方にある新宿1号踏切(東京都道414号四谷角筈線・東京都市計画道路幹線街路補助線街路第57号線)の標識は電車様式のものです。
昭和2年(1927年)に開業した小田急線上をSLが走ったのは戦中から戦後混乱期の一時期でしたので、SL標識との組み合わせには面白さが感じられます。
- 【参考文献】
- 中島工學博士記念事業會 『中島工學博士記念 日本水道史』 昭和2年8月15日
- 【関連記事】
- 東京都水道局の泥吐室 (2012.02.18)
- 野川沿いの東京市制水弇 (2012.02.06)
- 東京市仕様の混凝土製弁蓋 (2012.02.01)
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- 徐行標識と蟹沢支流 (2018.09.21)
- 【改訂】
- 小田急新宿1号踏切の写真を追加、踏切あり[207-B]の写真を差し替え(2022.09.04)
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