騎兵山の騎兵第一連隊の痕跡
騎兵山西側の道路から階段を上ると世田谷区立池尻見晴らし広場があります。ここは騎兵山の西端に当たります。広場には騎兵第一聯隊関係の4基の碑が鉄柵で囲まれて建っています。
正面の大きな石碑は明治27~28年の日清戦争と明治37~38年の日露戦争で死亡した騎兵第一聯隊所属兵士の表忠碑で、その左には満洲事変・支那事変・大東亜戰爭 戰没者慰霊塔
が建っています。
明治二十七八年及三十七八年戰役
戰死病沒者表忠碑
陸軍中將大勳位功四級載仁親王書 中村豊房𠜇
表忠碑の裏面には戦死や病死した兵士の氏名が刻まれ、日清戦争時の聯隊長である秋山中佐と日露戦争時の聯隊長である名和中佐の名が刻まれています。
明治二十八年九月 陸軍騎兵中佐秋山好古建立
明治三十九年十一月 陸軍騎兵中佐男爵名和長憲再建
表忠碑の右奥には秋山中佐が揮毫・建立した石碑があり、その裏面に日清戦争での戦死者氏名と階級が刻まれています。更に右側には騎兵第一聠隊創設百年記念碑もあります。
征清之役戰死者哀
悼𥓓建設工ヲ竣ル
茲二其姓名ヲ勒シ
永ク後世ニ傳フ明治二十九年六月三十日
騎兵第一聯隊長秋山好古謹記
騎兵第一聠隊創設百年記念
竹田恒德
騎兵第一聯隊は明治六年三月東京鎭台騎兵第一大隊として創設せられ皇居前馬場先門外の駐屯す明治十年西南役に従事し明治二十四年目黒駒場に移る部隊は我国騎兵の始祖として兵科練成の母隊たり明治二十七八年日清戰役には秋山好古少佐指揮の下に第二軍に属し軍捜索騎兵として旅順田庄台の攻略に偉勲を奏す明治二十九年大隊は騎兵第一聯隊に改編軍旗を親授せらる初代聯隊長は閑院宮載仁親王なり明治三十七八年日露戰役には第三軍に属し初めて軍旗を朔北の戰野に飜し奉天會戰に殊勲を顕し感状を授けらる昭和十一年チチハル孫呉に出動し北満警備に任じ勲功あり支那事変勃発するや留守隊は昭和十二年騎兵第百一大隊を上海南京武漢作戦に、次で昭和十四年捜索第三十二聯隊を北支晋南作戰に出動参加せしめ何れも赫々たる武勲を樹つ昭和十五年騎兵第一聯隊は捜索第一聯隊に改編軍旗を奉還す大東亜戰争酣となるや聯隊は北満より長駆南進第一師団に先陣に立ち挺進して日米両軍主決戰場レイテに突入孤軍激斗五十余日昭和二十年一月今田義男聯隊長以下全員悉く国難に殉じ斃れて後已む壮烈眞に鬼神も為に哭く顧みれば部隊創設以来茲に百年仍ち明治大正昭和三代に亘る歴史を追懐し先人の英魂を弔い其遺烈と勲業とを永く後昆に伝えんが為聯隊の旧址駒場台上忠魂碑の傍に此碑を建つ
昭和四十八年三月吉日 騎兵第一聯隊會
これらの騎兵第一聯隊址の碑群から2008年1月竣工のマンションを挟んだ反対側には、昭和5年 (1930年) 7月中旬に建立された馬神碑が建っていまこの碑は戦役や傷病により斃れ殉職した軍馬を祀る慰霊碑です。碑の前には蹄鉄が並べられ、人参などが供えられています。
池尻見晴らし広場の入口階段の近くにある大谷石擁壁の脇に花崗岩製の境界標石が建っています。上部が欠けていて刻印も読み取れませんが、設置場所から陸軍の境界標石と考えられます。
騎兵山の西側には偕行社池尻住宅があり、10数軒ほどの家が並んでいました。この偕行社と騎兵第一聯隊の境界道路沿いに、「陸軍」と刻まれた境界標石が1本建っています。
偕行社池尻住宅跡地の大谷石擁壁の前に偕行社のものと思われる無印の境界標石が建っていましたが、2022年3月に境界標石から南側の擁壁とともに撤去されてしまいました。
来年 (2023年) で騎兵第一聯隊創設150年を迎えます。
- 【参考文献】
- 世田谷区立郷土資料館 『地図で見る世田谷』 2017年10月28日
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