東京市地番整理要項

関東大震災後の復興事業による土地区画整理が施行された東京市内の地区では、町域や町名、地番の整理も行われました。これに先立ち東京市は地番整理の権原を有する大藏省と協議し承認を得て、昭和3年12月1日に"東京市地番整理要項"を制定しました。

東京市地番整理要項

1. 地番ノ定メ方

   公道󠄁ヲ以テ圍マレタル各街廊ヲ以テ一箇地番トス
   一街廊内ノ土地ガ其ノ所有者又ハ地目（地租條例第三條及第四條ノ區分ニ依ル）ヲ異ニシ換地設計上別筆トナリ居ルモノニ對シテハ一.二.三.等ノ符號ヲ附シテ各筆地ノ番號トナス

2. 地番ノ配列

   1. 地番ノ起㸃　地番ノ起㸃ニ一致セシメ其ノ町ノ主要街路ノ左右ニ依ツテ奇偶番號ニ振リ分ケ町ノ方向ニ從ツテ左側ニ沿フ第一番目ノ街廊ヲ奇數番號ノ起㸃トシ　右側ニ沿フ第一番目ノ街廊ヲ偶數番號ノ起㸃トス　從ツテ街廊式町割ノ町ニ於テハ奇偶何レカ一方ノミノ地番トス
   2. 地番ノ進路　主要街路ニ竝行シテ往復スル千鳥式トス
   3. 街廊内ニ於ケル符號ノ起㸃及進󠄁路　符號ノ起㸃ハ地番ノ起㸃ニ準ジ其ノ進路ハ主要街路ノ右側ハ常ニ右ヘ左側ハ常ニ左ヘ旋回スルモノトス

3. 地番ノ稱呼

   地番ノ稱呼ハ從前ノ通󠄁リ何町何丁目何番トシ　一箇地番ガ數筆ニ分裂セルモノハ何番ノ一.ニ.三トス

4. 街廊數ノ異動

   將來一街廊内ニ公道󠄁ヲ新設貫通󠄁シテ數街廊ニ分割サレタル場合ト號地番ハ更新セザルモノトス

5. 將來ニ於ケル土地ノ異動

   將來ニ於ケル土地ノ分合筆ハ從前通り取扱フモノトス

6. 道󠄁路上ノ地番

   道󠄁路ニハ原則トシテ地番ヲ附セザルモノトス

現在では大半の地区で住居表示に関する法律（昭和37年5月10日法律第119号）に基づく住居表示が実施された結果、この附番方式が残っている町は旧神田區と旧麴町區の住居表示未実施地区だけとなってしまいました。下表の主要街路は現代の道路名称です。

旧神田區の地番配置

昭和初期の町名	主要街路	奇数地番	偶数地番	成立
神保町一丁目～三丁目	靖国通り	南側	北側	S09.01.01
小川町一丁目～三丁目				S08.01.01
須田町一丁目～二丁目	靖国通り	北側	南側	S08.03.25
岩本町
淡路町一丁目～二丁目	外堀通り	西側	東側	S08.03.25
司町一丁目～二丁目				S10.01.01
駿河臺一丁目～二丁目	明大通り	西側	東側	S08.01.01
駿河臺三丁目～四丁目	本郷通り	西側	東側	S08.01.01
鍛冶町一丁目～三丁目	中央通り	西側	東側	S08.07.01
多町一丁目～二丁目	多町大通り	西側	東側	S08.07.01
錦町一丁目～三丁目	神田警察通り	南側	北側	S10.01.01
美土代町	神田警察通り	北側	南側	S10.01.01

• S22.03.15の千代田区成立時に全ての町名に「神田」の冠称を付加
• 神田岩本町の昭和通り東側はS40.07.01の住居表示実施で岩本町1丁目～3丁目を新設
• S41.04.01の住居表示実施により、神田美土代町の偶数地番は内神田1丁目、神田司町一丁目は内神田1丁目と2丁目、神田多町一丁目は内神田3丁目にそれぞれ編入
• 神田鍛冶町一丁目と二丁目はS49.01.01の住居表示実施で「神田」の冠称を省略

旧麴町區の地番配置

昭和初期の町名	主要街路	奇数地番	偶数地番	成立
麴町一丁目～六丁目	新宿通り	南側	北側	S09.07.01
一番町	番町通り	南側	北側	S13.08.01
二番町	番町中央通り	南側	北側	S13.08.01
三番町	番町学園通り	南側	北側	S08.07.01
四番町				S13.08.01
六番町
五番町	日本テレビ通り	東側	西側	S13.08.01
九段一丁目～四丁目	靖国通り	南側	北側	S08.07.01

• 九段一丁目～四丁目はS41.10.01の住居表示実施で、奇数地番は九段南1丁目～4丁目、偶数地番は九段北1丁目～4丁目に再編

【参考文献】

復興局『帝都復興事業槪觀』東京市政調査會、昭和3年3月30日

東京市政調査會『帝都復興事業大觀 上卷』日本統計普及會、昭和5年3月15日

東亰市役所『帝都復興區劃整理誌 第1編 帝都𠋩興事業槪觀』昭和7年3月26日

東京市企畫局都市計畫課『東京市町名沿革史（上卷）』昭和13年3月31日

日本地図株式会社『スタンダード東京都区分地圖帖』昭和37年3月20日

【関連記事】

小川町3丁目の看板建築と阻水弇 (2023.04.24)

神田区神保町の痕跡 (2023.04.23)

神田区須田町一丁目界隈【移築建物篇】 (2023.04.09)

神田区須田町一丁目界隈【現存建物篇】 (2022.10.06)