千住郵便局電話事務室
足立区千住中居町に建つ千住郵便局電話事務室は、昭和4年(1929年)5月に竣工したRC造2階建の逓信建築です。設計者は遞信省の山田守技師で、この時期には電信局、電話局の設計だけではなく、復興局土木部にも所属し永代橋、聖橋、萬代橋などの震災復興橋梁のデザインも行っていました。
南側にはアーチ門があり、外壁にはスクラッチタイルが使われています。昭和7年10月1日の足立區発足に伴い足立郵便局電話分室に改称されました。戦後、足立電話局となり、3階部分が増築されました。2002年3月の足立局廃止後はNTT千住ビルとして管理され、2021年末に3階部分が撤去されました。
千住郵便局に磁石式手動交換機を設置し、明治45年(1912年)5月11日に加入者数52件で電話の取り扱いが始まりました。電話事務室竣工後の昭和5年3月23日に自動交換化されました。東京市を含む千住町外との市外通話は交換手に申し込んでから通話が可能となるまで一旦電話を切って待つ待時式でしたが、同年4月1日から東京市内との通話は交換手による手動即時接続になりました。
昭和7年10月1日に東京市に編入された後も、東京市15區を中心とした東京中央電話局管内からの電話は市外通話扱いで、交換手の操作による手動接続のままで変わりませんでした。これは足立区だけではなく、編入された他の地域でも同様でした。昭和11年1月16日からは足立から東京へ発信する電話に限り、ダイヤル式の自動即時通話になりました。
- (ⅰ) 市外通話であることを番号上で識別させるため、加入者に最初に"0"をダイヤルさせる。
- (ⅱ) 課金は相手局に延びる回線に設備された自動即時レピータにより、市内用の加入者度数計を登算させる。そのため市外料金は3分間の料金が市内の度数料金の整数倍となるように定める。
- (ⅲ) 夜間に料金の低減は行なわない。
- (ⅳ) 自動即時レピータの設計を簡単にするため、通話時間は4時数(12分)までとし、それ以上は強制的に切断する。
東京市内通話区域への編入は、昭和13年4月1日の大森・荏原・中野各局を皮切りに、昭和32年6月1日の練馬北町局への編入まで足掛け20年掛けて順次実施されました。この中で足立局は昭和28年7月1日に東京市内通話区域へ編入されました。
従来の電話交換機を使った公衆交換電話網 (PSTN) は、2024年1月の1ヶ月間で段階的にVoIPを利用したIP網に切り替えられます。これにより市内通話と市外通話の区別がなくなります。
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- 【参考文献】
- 日本電信電話公社東京電気通信局『東京の電話 : その五十万加入まで. 中』昭和36年3月
- 日本電信電話公社東京電気通信局『東京の電話 : その五十万加入まで. 下』昭和39年8月
- 電気通信学会『新料金制と自動即時用機器〔その1〕~実用通信工学叢書 電話機械編』p.5, 昭和38年9月1日
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