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東京の2桁市内局番【5】

加入区域図

(承前) 昭和7年(1932年)10月1日、東京市は隣接5郡82町村を編入し15区を35区にしました。昭和11年10月1日に北多摩郡千歳村と砧村を世田谷區に編入し、東京市の市域が現在の東京都区部の範囲に拡大しました。ところが、編入された新市域にある電話局の東京市内への編入は市域拡大とは同時ではありませんでした。

東京15区

加入区域図

引き続き旧市域で分局の開局や自動交換化が推し進められました。開局した分局は根岸・駒込󠄁・大崎・澁谷・淀橋・深川・城東・築地の7局でした。城東分局は手動交換局として墨田分局内で開局し、昭和18年に移転し自動化されました。自動化は浪花と小石川でも行われました。また芝分局内で仮開局していた三田分局は局舎竣工により昭和7年10月9日に正式開局しました。

局番號一覽(昭和19年3月31日現在)
局番號局名所在地備考
06◎大森大森區入新井五丁目349S13.04.01市内に編入
08◎荏原荏原區平塚四丁目249S13.04.01市内に編入
S16.04.01町名地番整理
23◎丸ノ内麴町區大手町二丁目4
24◎日本橋麴町區大手町二丁目4
25◎神田神田區司町二丁目16-1S10.01.01町名地番整理
33◎九段麹町區九段三丁目2-8S08.07.01町名地番整理
34牛込󠄁牛込󠄁區細工町22
35四谷四谷區四谷四丁目12S18.04.01町名地番整理
36靑山赤坂區靑山北町四丁目1
37◎淀橋四谷區四谷四丁目12S13.08.14鹽町三丁目41で開局
S18.04.01町名地番整理
38◎中野中野區本町通󠄁四丁目11S13.04.01市内に編入
43◎芝芝區田村町六丁目2S07.12.01町名地番整理
44高輪芝區田町九丁目11
45◎三田芝區松本町44S07.10.09正式開局
46◎澁谷澁谷區猿樂町1-12S13.03.20開局
48◎赤坂赤坂區福吉町1
49◎大崎品川區大崎本町二丁目41S12.09.05開局
55◎築地京橋區入船町三丁目3S15.09.01開局
56◎京橋京橋區木挽町一丁目19-2
57◎銀座京橋區銀座西八丁目2
64◎深川深川區深川二丁目6S14.07.23開局
S16和倉町6から町名変更
66◎茅場町日本橋區浪花町1-12S08.02.01地番整理
67◎浪花日本橋區浪花町1-34S08.02.01地番整理
S09.11.03自動化
68◎城東城東區大島町三丁目58S14.03.19墨田分局内で開局
S18.04.10移転・自動化
73◎本所󠄁本所󠄁區菊川一丁目29-8S08.09.01町名地番整理
74墨田本所󠄁區石原町四丁目21
82◎駒込󠄁本鄕區駒込󠄁林町9S12.08.15開局
83◎下谷下谷區仲御徒町三丁目12
84◎淺草淺草區雷門一丁目37-1S09.09.01町名地番整理
85◎小石川小石川區柳町25S13.12.04自動化
86◎大塚小石川區大塚仲町36
87◎根岸淺草區雷門一丁目37-1S08.04.23淺草分局内で開局

◎は自働局

昭和13年4月1日に新市域の大森・荏原・中野の各電話局が市内に編入され、東京中央電話局の分局になりました。このとき、大森區、蒲田區、荏原區が0區畫に設定されたため大森分局と荏原分局の局番號の上位が0になりました。

即時通話と準即時通話

東京中央電話局管内から新市域に電話をするときは市外通話となり、相手局によって即時通話と準即時通話がありました。準即時通話は昭和7年12月に取扱手続が制定されました。『電話番號簿 昭和14年4月1日現在』には利用手続きが詳細に説明されています。昭和11年~14年発行の同書にある「東京市電話加入區域略圖」(本記事内の3図)にも即時/準即時通話取り扱い局が示されています。

即時通󠄁話のお申込󠄁み方

現在の卽時通󠄁話地は川崎日吉蒲田羽田池上田園調布世田谷松澤荻窪落合長崎王子赤羽足立本田板橋、の十五ケ所であります。

  • 手働式電話からお掛けになる場合は「何番へ」と應答があつたときに「卽時」又は「對話地名」をお告げください。
  • 自働式電話からお掛けになる場合は三數字「117」番をお呼出し下さい。

取扱者が出たら對話者番號と御自分の電話の番號とをお告げになり其儘お待ち下さい、卽時通話はお申込󠄁と同時にお話が出來るのですから、お申込後も受話器をお掛けにならぬ様又御自分の電話は必ず現に御使用になつてゐる電話の番號をお申込󠄁下さる様御注意下さい。他の番號をお申込󠄁になつては接がりません。自働式電話から卽時地への通󠄁話中、受話器掛金物を上下すると、機械設備の關係で其接續は切れてしまひますから御注意下さい。若し通󠄁話中に切れた場合は、直ぐに手働式局所屬の方は市外「500」番自働式局所屬の方は三數字「115」番を呼んで其旨をお告げください。

準卽時通󠄁話のお申込み方

現在の準卽時地は橫濱鶴見玉川吉祥寺石神井練馬練馬北町川口六月町新宿小岩市川江戸川葛西千歳烏山中原溝ノ口の十八ケ所であります。準卽時通󠄁話法では、通󠄁話の輻輳するとき(平日なら大體午前九時から、同十二時頃迄)は、一般市外通󠄁話同様暫くお待合せを願はねばなりませんが、それ以外の時ならば大抵、すぐお接ぎ出來ることになつて居ります。尤も輻輳時でも至急󠄁通󠄁話でお申込󠄁になれば直ぐにお接ぎ出來る場合もありますからお急󠄁ぎの節は至急󠄁通󠄁話を御利用下さい。

此の準即時通󠄁話法によるお申込󠄁み方や局の取扱方は次の通󠄁りであります。

  • 手働式電話からお掛けになる場合は「何番へ」と應答がありましたら「準卽時」又は「對話地名」をお告げください。
  • 自働式電話からお掛けになる場合は三數字「118」番をお呼出し下さい。

準卽時臺交換取扱者が出たら對手番號と御使用になつて居らるゝ局名と電話番號とを告げて、其儘お引込󠄁みにならずにお待ち下さい。此の時、線塞り等ですぐお接ぎ出來ない時は、取扱者が其の旨をお斷り致しますから一旦受話器をお掛けになつてお待ち下さい。至急󠄁通󠄁話の場合は、其の際「至急󠄁通話」とお申出下さい。

準卽時通話も卽時通話と同様必ず御使用になつて居るその電話の番號でお申込󠄁み下さい。他の番號でお申込󠄁みになると接がりません。

自働式電話から準卽時地へ通󠄁話中、受話器掛金物を上下すると其接續は切れて了ひますから御注意下さい。通󠄁話中に切れた場合及お申込󠄁み後お待ちになつて居る時の、接續見込󠄁時間のお問合せ又は、お申込󠄁みの取消等は、一般市外通話同様手働式局所屬の方は「市外500」番へ、自働式局所屬の方は三數字「115」番へお申出を願ひます。

準即時通話局 即時通話局

翌年発行の『電話番號簿 昭和15年4月1日現在』からは紙不足や防諜上の観点から、説明が簡略化され、「加入區域略圖」や電話局の所在地などが省略されるようになりました。

昭和27年4月1日に準即時通話の区分がなくなり、即時通話に一本化されました。

新市域の電話局

東京市に編入された昭和7年10月1日に千住、世田ヶ谷、練馬上宿、淵江局が改称されました。

遞信省告示第千七百八十號

昭和七年十月一日ヨリ左記郵便局ヲ改稱ス

昭和七年九月二十六日 遞信大臣 南弘

現名稱改稱位置
寺島郵便局向島ムコウジマ郵便局東京市向島區寺島七丁目
千住郵便局足立アダチ郵便局同足立區千住中居町
巢鴨郵便局豐島トシマ郵便局同豐島區巢鴨三丁目
龜戸郵便局城東ゼウトウ郵便局同城東區龜戸町二丁目
世田ヶ谷郵便局世田谷セタガヤ郵便局同世田谷區太子堂町

遞信省告示第千八百二十八號

昭和七年十月一日ヨリ左記郵便局ヲ改稱ス

昭和七年九月二十九日 遞信大臣 南弘

現名稱改稱位置
練馬上宿郵便局練馬北町ネリマキタマチ郵便局東京市練馬區練馬北町二丁目
梅島郵便局足立梅田アダチウメタ郵便局同足立區梅田町
淵江郵便局六月町ロクガツテウ郵便局同同六月町

編入後に新たに開局したのは昭和8年3月11日の葛西局だけで、主に自動交換化と東京市内との即時通話化が行われました。自動交換化した局では東京へ発信する通話が0発信の自動化(対東京自動、東京市内からの発信は手動即時通話)されました。

電話局

世田谷・蒲田・荻窪の3局は敷地内で局舎を増築し自動交換化しました。池上・板橋・王子・羽田・本田・田園調布・落合長崎の7局は近くの別の場所に局舎を新築して自動交換化を行いました。荻窪局舎は荻窪郵便局電話事務室として昭和7年竣工、一部改装されつつもNTT荻窪ビルとして使用されています。池上局舎は最近まで大田区立池上図書館として使われていました。

池上・羽田・荻窪・本田・田園調布の5局は局舎移転と同時に郵便局から分離しました。大森局は電話局舎は移転せずに、昭和12年3月29日に郵便局が大森區入新井六丁目102番地2に移転しました。松澤局は昭和15年11月1日に郵便局と分離し単独の電話局になりました。

逓信省マンホール

玉川局は当初から郵便局とは別の場所に設置されたようです。郵便局舎は昭和12年頃に玉川電気鐵道玉川駅(現: 二子玉川駅)東側の玉川町1384番地(現: バスターミナル)から西側の玉川町1761番地(現: 世田谷区玉川3丁目7)に移転しました。局舎移転先の玉川通り歩道上には逓信省のマンホールが残っています。

新市域の電話局の即時/準即時通話化・自動交換化一覧
局名所在地準即時化即時化自動交換対東京自動備考
池上大森區池上德持町117S10.01.16S12.12.12S12.12.12S12.12.12S12.12.12池上本町315から移転
S17.12池上德持町943から地番変更
大森大森區入新井五丁目349-S02.06.05S11.09.06S11.09.06S13.04.01東京電話に編入
世田谷世田谷區太子堂町472-S08.03.26S08.03.26S10.11.11S07.10.01世田ヶ谷から改称
板橋板橋區板橋町二丁目581S10.01.16S13.09.11S13.09.11S13.09.11S13.09.11板橋町六丁目3279から移転
王子王子區豐島町一丁目1-S09.04.01S09.04.01S11.01.21S09.04.01王子町450から移転
S14王子町229から町名変更
中野中野區本町通󠄁四丁目11-S05.04.01S05.03.30S10.10.01S13.04.01東京電話に編入
赤羽王子區岩淵町二丁目260S10.01.16S11.03.02S11.03.02S11.03.02S09.09.16赤羽町一丁目238から移転
足立足立區千住中居町65-S05.04.01S05.03.23S11.01.16S07.10.01千住から改称
蒲田蒲田區本蒲田五丁目1-S09.03.18S09.03.18S10.11.16S12.11.01新宿町133から町名地番変更
玉川世田谷區玉川町1495S10.01.16---
新宿葛飾區新宿町一丁目3376S10.01.16---
羽田蒲田區萩中町662S10.01.16S13.02.20S13.02.20S13.02.20S13.02.20羽田一丁目1104から移転
荻窪杉並區荻窪三丁目95-S08.04.01S08.04.01S11.03.01S08.04.01荻窪三丁目93から移転
小岩江戶川區小岩町二丁目3172S10.01.16---
練馬板橋區練馬南町五丁目7069S10.01.16---
荏原荏原區小山町240-S05.04.27S05.04.27S10.09.01S13.04.01東京電話に編入
本田葛飾區本田町272S10.01.16S13.08.21S13.08.21S13.08.21S13.08.21本田澁江町888-2から移転
田園調布大森區田園調布三丁目336S10.01.16S10.09.22S10.09.22S10.09.22S10.09.22田園調布三丁目68から移転
石神井板橋區下石神井二丁目1296S10.01.16---
江戸川江戶川區東小松川三丁目3000S10.01.16---S12.11.01東小松川から改称
世田谷區成城町358S12.06.20---
練馬北町板橋區練馬北町二丁目279S10.01.16---S07.10.01練馬上宿から改称
六月町足立區六月町398S10.01.16---S07.10.01淵江から改称
落合長崎豐島區椎名町四丁目2128S10.01.16S11.01.16S11.02.02S11.02.12S11.02.02長崎南町一丁目1890から移転
S14長崎南町二丁目2128から町名変更
千歳烏山世田谷區烏山町624S13.07.01---
松澤世田谷區松原町二丁目683S10.01.16S11.02.23S11.02.23S11.02.23
葛西江戶川區桑川町701S10.01.16---S08.03.11開局
加入区域図

昭和13年4月1日に大森・荏原・中野の各局が東京中央電話局の分局になることで東京市内に編入されました。大森郵便局は昭和12年3月29日に大森區入新井五丁目349番地から入新井六丁目102番地(現: 大田区山王3丁目9-13)に移転していますので、遞信省告示中の大森郵便局と大森電話局の所在地は誤植になります。

遞信省告示第六百八十二號

昭和十三年四月一日ヨリ左記電話分局ヲ設置シ電話交換業務竝ニ電話加入事務及料金事務ヲ取扱フ

昭和十三年三月十日 遞信大臣 永井柳太郎

名稱位置
東京中央電話局大森オウモリ分局東京市大森區入新井ママ丁目
東京中央電話局荏原エバラ分局同荏原區小山町
東京中央電話局中野ナカノ分局同中野區本町通󠄁四丁目

遞信省告示第六百八十三號

昭和十三年三月三十一日限リ左記電話局及郵便局ニ於ケル電話事務ヲ廢止シ下記電話局之ヲ承繼ス但シ大森及中野郵便局ニ於ケル電話通󠄁話事務ヲ除ク

昭和十三年三月十日 遞信大臣 永井柳太郎

名稱位置承繼局
大森郵便局東京市大森區入新井ママ丁目東京中央電話局
荏原電話局同荏原區小山町
中野郵便局同中野區本町通󠄁二丁目

昭和18年度末には東京市内の加入電話数が20万6千と最高を迎えました。

(続く)

【東京の2桁市内局番】
東京の2桁市内局番【1】: 局番なしの時代
東京の2桁市内局番【2】: 震災と自動交換方式の採用
東京の2桁市内局番【3】: 震災復興期
東京の2桁市内局番【4】: 隣接5郡の電話
東京の2桁市内局番【5】: 東京市域拡大
東京の2桁市内局番【6】: 戦災から郵電分離まで
東京の2桁市内局番【7】: 電気通信省
東京の2桁市内局番【8】: 3桁局番誕生前夜
東京の2桁市内局番【9】: 3桁局番併用そして終焉

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