東京の2桁市内局番【7】
(承前) 昭和24年(1949年)6月1日に逓󠄂信省が二省に分離され、電氣通󠄁信省と郵政省が設置される郵電分離が行われました。これにより、電話局が郵便局から自立し、独自の道を歩むことになりました。その一方で引き続き戦災からの復旧が鋭意進められました。
郵電分離
郵電分離で地方電気通信取扱局が設置され、大規模局は電話局若しくは電報電話局に改組されました。一方、小規模局である千歳烏山・砧・玉川・北町・六月町・葛西では、郵便局に手動式の電話交換業務を委託し、設備の建設・維持管理だけを行いました。
電気通󠄁信省告示第七十二号
電気通󠄁信省設置法(昭和二十三年法律第二百四十五号)第二十六條第一項及び第二項並びに第二十七條第四項の規定に基き、昭和二十四年六月一日から、左により地方電気通󠄁信取扱局を設置した。
- 地方電気通󠄁信取扱局(以下取扱局という。)の種別及び所掌事務は、左のとおりである。
種別 所掌事務 電話局 電話の業務及び施設に関する現業事務 電報局 電信の業務及び施設に関する現業事務 電報電話局 電話並びに電信の業務及び施設に関する現業事務 市外電話局 電話の業務及び施設に関する現業事務のうち、市外電話に関するもの 国際電話局 電話の業務のうち、国際電話に関する現業事務 国際電報局 電信の業務のうち、外国電報に関する現業事務 無線電報局 電信の業務のうち、無線電報に関する現業事務 気象無線電報局 電信の業務のうち、気象無線電報に関する現業事務 放送󠄁無線電報局 電信の業務のうち、放送󠄁無線電報に関する現業事務 電気通󠄁信施設区 委託によつて電気通信業務を行う郵便局の電気通󠄁信設備の保存、試験及び建設 市外電話施設区 市外電話設備の保存、試験及び建設 公安通󠄁信施設区 警察用及び消防用の電気通󠄁信設備の保存、試験及び建設 統制電話中継所 伝送󠄁機械設備の保存、試験及び建設、回線の統制並びに市外電話通󠄁話の伝送󠄁 電話中継所 伝送󠄁機械設備の保存、試験及び建設並びに市外電話通󠄁話の伝送󠄁 電信中継所 電信機械設備の保存、試験及び建設並びに電信通󠄁信の伝送󠄁 無線中継所 無線中継設備の保存、試験及び建設並びに通󠄁信電波の送󠄁受信 無線送󠄁信所 無線送󠄁信設備の保存、試験及び建設並びに通󠄁信電波の送󠄁信 無線受信所 無線受信設備の保存、試験及び建設並びに通󠄁信電波の受信 無線送󠄁受信所 無線中継設備、無線送󠄁信設備及び無線受信設備の保存、試験及び建設並びに通󠄁信電波の送󠄁受信 無線調整所 有無線連絡設備及び無線遠󠄁操の保存、試験及び建設並びに無線通󠄁信の送󠄁受信 特別電話局 連合軍の要求する電話サービスの直接提供 特別市外電話局 連合軍の要求する電話サービスのうち市外電話に関するものの直接提供 - 取扱局の名称、位置及び所轄地方機関(地方電気通󠄁信管理所、地方電気通󠄁信部及び地方電気通󠄁信局)は、別表のとおりである。
- 取扱局に分室又は出張所を設けることがある。分室又は出張所を設置し、又は廃止するときは、その名称、位置及びその他必要と認める事項を公示する。
- 取扱局の窓口取扱事務の範囲は、別に公示する。
昭和二十四年十月十八日 電気通󠄁信大臣 小沢左重喜
別表
地方電気通󠄁信取扱局の名称、位置及び所轄地方機関表
用語例
(一)見出しのうち、「管理所」、「通󠄁信部」及び「通󠄁信局」とあるのは、それぞれ「地方電気通󠄁信管理所」、「地方電気通󠄁信部」及び「地方電気通󠄁信局」の略称である。
(二)所轄地方機関の欄は、それぞれ次のように略称を用いた。
- 管理所欄のうち、單に地名のみを記載したものは「何(地名)電気通󠄁信管理所」、地名に「搬送󠄁」「無線」等を附記したものは、「何(地名及び搬送󠄁、無線等)管理所」の略称である。
例「東京丸の内」=「東京丸の内電気通󠄁信管理所」[中略]- 通󠄁信部の欄は、いずれも「何(記載事項)電気通󠄁信部」の略称である。
例「東京都市」=「東京都市電気通󠄁信部」[中略]- 通󠄁信局の欄は、いずれも「何(記載事項)電気通󠄁信局」の略称である。
例「関東」=「関東電気通󠄁信局」一 電話局の部
名称 位置 管理所 通󠄁信部 通󠄁信局 東京丸の内電話局 東京都千代田区 東京丸の内 東京都市 関東 東京神田電話局 東京都千代田区 東京京橋 東京都市 関東 東京築地電話局 東京都中央区 東京京橋 東京都市 関東 東京京橋電話局 東京都中央区 東京京橋 東京都市 関東 東京銀座電話局 東京都中央区 東京京橋 東京都市 関東 東京茅場町電話局 東京都中央区 東京京橋 東京都市 関東 東京九段電話局 東京都千代田区 東京新宿 東京都市 関東 東京淀橋電話局 東京都新宿区 東京新宿 東京都市 関東 東京中野電話局 東京都中野区 東京新宿 東京都市 関東 東京荻窪電話局 東京都杉並区 東京新宿 東京都市 関東 松沢電話局 東京都世田谷区 東京新宿 東京都市 関東 東京下谷電話局 東京都台東区 東京台東 東京都市 関東 東京浅草電話局 東京都台東区 東京台東 東京都市 関東 東京芝電話局 東京都港区 東京港 東京都市 関東 東京三田電話局 東京都港区 東京港 東京都市 関東 東京赤坂電話局 東京都港区 東京港 東京都市 関東 東京澁谷電話局 東京都澁谷区 東京港 東京都市 関東 世田谷電話局 東京都世田谷区 東京港 東京都市 関東 東京大森電話局 東京都大田区 東京大田 東京都市 関東 東京蒲田電話局 東京都大田区 東京大田 東京都市 関東 東京池上電話局 東京都大田区 東京大田 東京都市 関東 東京荏原電話局 東京都品川区 東京大田 東京都市 関東 東京羽田電話局 東京都大田区 東京大田 東京都市 関東 東京大崎電話局 東京都品川区 東京大田 東京都市 関東 東京田園調布電話局 東京都大田区 東京大田 東京都市 関東 東京王子電話局 東京都北区 東京豊島 東京都市 関東 東京大塚電話局 東京都文京区 東京豊島 東京都市 関東 東京駒込󠄁電話局 東京都文京区 東京豊島 東京都市 関東 東京落合電話局 東京都豊島区 東京豊島 東京都市 関東 東京板橋電話局 東京都板橋区 東京豊島 東京都市 関東 東京赤羽電話局 東京都北区 東京豊島 東京都市 関東 東京小石川電話局 東京都文京区 東京豊島 東京都市 関東 東京深川電話局 東京都江東区 東京墨田 東京都市 関東 東京城東電話局 東京都江東区 東京墨田 東京都市 関東 [以下略] 二 電報局の部
[中略]
三 電報電話局の部
名称 位置 管理所 通󠄁信部 通󠄁信局 足立電報電話局 東京都足立区 東京台東 東京都市 関東 石神井電報電話局 東京都練馬区 東京豊島 東京都市 関東 本田電報電話局 東京都葛飾区 東京墨田 東京都市 関東 江戶川電報電話局 東京都江戶川区 東京近郊 東京地方 関東 小岩電報電話局 東京都江戶川区 東京近郊 東京地方 関東 葛飾新宿電報電話局 東京都葛飾区 東京近郊 東京地方 関東 練馬電報電話局 東京都練馬区 東京近郊 東京地方 関東 [以下略] 四 市外電話局の部
[中略]
二一 特別電話局の部
名称 位置 管理所 通󠄁信部 通󠄁信局 大手特別電話局 東京都千代田区 東京丸の内 東京都市 関東 成増特別電話局 東京都練馬区 東京丸の内 東京都市 関東 立川特別電話局 立川市 立川 東京地方 関東 二二 特別市外電話局の部
[以下略]
日本橋局は丸の内局内のため、玉川・砧・練馬北町・六月町・千歳烏山・葛西の各局は郵便局に業務委託のため告示に記載されていません。
電話局の開局と市内編入
電気通󠄁信省時代に開局や市内に編入した電話局は8局、局番号の変更は2局、所在地名の改称は1局でした。
局番号 | 局名 | 実施日 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|
20 | 和田倉 | S26.05.05 | 千代田区大手町二丁目4 | 丸の内局内で開局 |
26 | 大手 | S24.06.01 | 千代田区大手町二丁目4 | 丸の内局内、連合軍専用 |
32 | 松沢 | S26.07.15 | 世田谷区松原二丁目683 | 東京市内に編入 |
35 | 四谷 | S25.03.26 | 新宿区四谷四丁目12 | 自動交換化して復旧 |
42 | 世田谷 | S25.04.09 | 世田谷区太子堂町472 | 東京市内に編入 |
56 | 京橋 | S26.08.01 | 中央区銀座東一丁目19-2 | 町名改称 |
58 | 霞ヶ関 | S25.12.17 | 中央区入船町三丁目3 | 築地局内で仮開局 |
67 | 兜町 | S26.04.01 | 中央区浪花町1-34 | 旧浪花局舎で開局 |
73 | 本所 | S26.02.25 | 墨田区菊川町1丁目27 | 復旧 |
74 | 深川 | S26.02.25 | 江東区深川二丁目6 | 局番号64から変更 |
78 | 城東 | S26.02.25 | 江東区大島町三丁目58 | 局番号68から変更 |
87 | 根岸 | S24.12.01 | 台東区浅草雷門一丁目37-1 | 浅草局内で復旧 |
四谷・本所・根岸の各局は戦災復旧による開局でした。本所局の復旧に伴い、深川局と城東局と合わせて7区画が復活しました。兜町局は旧浪花局舎の再用による開局で実質は浪花局の戦災復旧です。
霞ヶ関局は昭和33年2月9日に千代田区内幸町一丁目1に移転するまで、仮住いの築地局と内幸町の間をケーブルで連絡していました。その隣に昭和36年3月に竣工した日比谷電電ビル(2022年解体)南西角には荒玉水道制水辨の大型角蓋がありました。和田倉局は昭和32年10月13日に千代田局内の装置に換装されました。
世田谷局では編入時に加入者番号が編入前の番号から2000を減じ0000~3999の範囲内に収められました。松沢局が東京市内に編入された昭和26年7月15日に世田谷局と松沢局が改称されました。
電気通󠄁信省告示第百五十五号
昭和二十六年七月十五日から、次の地方電気通󠄁信取扱局を改称した。
昭和二十六年七月二十四日 電気通󠄁信大臣 佐藤栄作
旧名称 新名称 松沢電話局 東京松沢電話局 電気通󠄁信省告示第百五十九号
昭和二十六年七月十五日から、次の地方電気通󠄁信取扱局を改称した。
昭和二十六年七月二十ハ日 電気通󠄁信大臣 佐藤栄作
旧名称 新名称 位置 世田谷電話局 東京世田谷電話局 東京都世田谷区
電話加入区域を共通と看做す関係電話取扱局
東京・横浜・岡谷諏訪・名古屋・京都・大阪・神戸・舞鶴・広島・秋田の10の市域で複数電話局を同一市内として扱うことが行われていて、昭和26年8月1日に告示内容が整理統合されました。
電気通󠄁信省告示第百七十九号
電話規則(昭和十二年逓信省令第七十三号)第四條第三項の規定により、電話加入区域を共通と看做す関係電話取扱局は、次のとおりとする。
なお、昭和十九年三月逓信省告示第百五十六号(昭和十二年逓信省令第七十三号・電話規則第四條第三項ニヨル電話取扱局ニ關スル件)は、昭和二十六年七月三十一日限り廃止した。 昭和二十六年八月二十八日 電気通󠄁信大臣 佐藤栄作
一 次の各電話取扱局相互間 局名 実施年月日 東京丸の内電話局
(丸の内 日本橋 和田倉)昭和
二四、六、一東京神田電話局 同 東京築地電話局 同 東京京橋電話局 同 東京銀座電話局
(銀座 霞ヶ関)同 東京茅場町電話局 同 東京兜町電話局 二六、四、一 東京九段電話局 二四、六、一 東京淀橋電話局 同 東京四谷電話局 二五、三、二六 東京中野電話局 二四、六、一 東京荻窪電話局 同 東京松沢電話局 二六、七、一五 東京下谷電話局 二四、六、一 東京浅草電話局
(浅草 根岸)同 東京芝電話局 同 東京三田電話局 同 東京赤坂電話局 同 東京澁谷電話局 同 東京世田谷電話局 二五、四、九 東京大森電話局 二四、六、一 東京蒲田電話局 同 東京池上電話局 同 東京荏原電話局 同 東京羽田電話局 同 東京大崎電話局 同 東京田園調布電話局 同 東京王子電話局 同 東京大塚電話局 同 東京駒込󠄁電話局 同 東京落合電話局 同 東京板橋電話局 同 東京赤羽電話局 同 東京小石川電話局 同 東京深川電話局 同 東京城東電話局 同 東京本所電話局 二六、二、二五 [中略]
註 括弧内の名称は、上記電話局加入電話を收容する局内設備の区分を表示したものである。
築地局内に収容されている霞ヶ関局が銀座局に記載されています。また昭和26年に開局・編入の本所、兜町、松沢の3局は個別の告示も為されていましたが、昭和25年以前に関して個別の告示は特になく既成事実として扱われていたようです。
日本電信電話公社へ
昭和27年5月には加入者数が21万6000余りに達し、戦前の最高値をようやく超えました。そして同年8月1日に電気通信省は廃止され、郵政省の外郭団体として設立された日本電信電話公社に移行しました。
区画 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 田園調布(02) | 蒲田(03) | 羽田(04) | 池上(05) | 大森(06) | 荏原(08) | ||||
2 | 和田倉(20) | 丸の内(23) | 日本橋(24) | 神田(25) | 大手(26) | |||||
3 | 松沢(32) | 九段(33) | 四谷(35) | 淀橋(37) | 中野(38) | 荻窪(39) | ||||
4 | 世田谷(42) | 芝(43) | 三田(45) | 澁谷(46) | 赤坂(48) | 大崎(49) | ||||
5 | 築地(55) | 京橋(56) | 銀座(57) | 霞ヶ関(58) | ||||||
6 | 茅場町(66) | 兜町(67) | ||||||||
7 | 本所(73) | 深川(74) | 城東(78) | |||||||
8 | 赤羽(80) | 王子(81) | 駒込󠄁(82) | 下谷(83) | 浅草(84) | 小石川(85) | 大塚(86) | 根岸(87) | ||
9 | 落合(95) | 板橋(96) |
(続く)
- 【東京の2桁市内局番】
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- 東京の2桁市内局番【2】: 震災と自動交換方式の採用
- 東京の2桁市内局番【3】: 震災復興期
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