松原町の逓信省境界標

昭和7年(1932年)10月1日に世田谷町、駒澤町、松澤村、玉川村が合併して世田谷區が誕生しました。このとき飛地が整理され、基本的には各町村の大字を踏襲する形で町名・町域が制定されました。松澤村大字松原の大半は世田谷區松原町一丁目～四丁目になりました。

大正中期から昭和初期にかけて洋風生活を取り入れた和洋折衷住宅である文化住宅が流行し、世田谷や杉並といった東京近郊の宅地開発で数多くの文化住宅が造られました。その一方で東京近郊の商店などでは、看板建築だけではなく伝統的な出桁造構造を持つ町家も造られていました。

松原町内には従来の和風住宅の玄関脇に洋風の応接間が造られた文化住宅や洋館風の文化住宅、出桁造町家が点在して残っています。これらの建物は昭和初期の建築と見受けられます。

昭和7年7月15日に甲州街道（國道八號、現国道20号）に面した荏原郡松澤村大字松原字中原682番地に松澤郵便局電話事務室が設置され交換業務が始まりました。

遞信省告示第千二百八十九號

昭和七年七月十六日ヨリ左記郵便局ニ電話交換業務ヲ開始ス

昭和七年七月五日　遞信大臣　南弘

名稱	位置
松澤郵便局	東京府荏原郡松澤村

同年10月の世田谷區誕生により所在地名が松原町二丁目682番地になりました。後年、松沢電話局/NTT松沢ビル本館として使われ、2017年に解体されました。電話局跡地の北西隅には、正面と背面に「逓信省用地」の文字が刻まれた御影石製境界石が残っています。

昭和11年2月23日に自動交換化、東京市内への発信も自動化され、市内からの発信は手動即時通話になりました。松澤郵便局は大正9年の開局時から大字松原字七軒町837番地（→松原町三丁目837番地）に位置し、電話事務室はそこから東に100m程離れていましたが、昭和15年11月1日に郵便局から完全に独立しました。

遞信省告示第二千八百五十號

昭和十五年十一月一日ヨリ左記二等電話局ヲ設置ス

昭和十五年十月二十三日　遞信大臣　村田省藏

名稱	位置
松澤マツザワ電話局	東京市世田谷區松原町二丁目

遞信省告示第二千八百五十一號

昭和十五年十月三十一日限リ左記郵便局ニ於ケル電話規則ニ依ル電話事務ハ之ヲ廢止ス但シ當該事務ハ下記電話局之ヲ承繼ス

昭和十五年十月二十三日　遞信大臣　村田省藏

名稱	位置	承繼局
松澤郵便局	東京市世田谷區松原町三丁目	松澤電話局

そして、同月24日に松澤郵便局は瀧坂道に面した世田谷區船橋町1100番地に移転し、千歳郵便局と改称されました。

遞信省告示第三千二百二號

昭和十五年十一月二十四日ヨリ左記郵便局ヲ移轉改稱ス

昭和十五年十一月二十二日　遞信大臣　村田省藏

現名稱	現在位置	改稱	移轉位置
松澤郵便局	東京市世田谷區松原町三丁目	千歳チトセ郵便局	東京市世田谷區船橋町

昭和44年2月1日に住居表示が実施され、所在地名が世田谷区船橋5丁目11-15になりました。そして翌昭和45年に千歳郵便局は現在地である小田急線沿いの経堂1丁目40-1に再移転しました。

【参考文献】

松澤村役場『松澤村史』昭和7年9月30日

"遞信省告示第千二百八十九號", 官報, 第1653號, p.114 (昭和7年7月5日)

"遞信省告示第二千八百五十號", 官報, 第4139號, p.775 (昭和15年10月23日)

"遞信省告示第二千八百五十一號", 官報, 第4139號, p.775 (昭和15年10月23日)

"遞信省告示第三千二百二號", 官報, 第4165號, p.780 (昭和15年11月22日)

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